
就活では、自分の志向と企業がマッチしているか見極めるために「企業研究」を行い、企業について理解を深めることが重要です。しかし、「どのような情報を調べたらいいの?」「企業研究ってすごく時間がかかりそう…」と不安になる方もいると思います。そんな就活生の皆さんに今回は企業研究のやり方や効率的な情報収集の方法、就活での活かし方を紹介します。
面接の志望動機にも活かせる企業研究シートの作成方法や、企業研究を効率的に進めたい人におすすめの「ビジ研」というサイトも紹介するので、ぜひ参考にしていただけたら幸いです。
企業研究とは?どうして必要なのか?
そもそも「企業研究とはどんなもの?」「業界研究とはどう違うの?」と疑問に感じている方も多いと思います。ここでは、企業研究と業界研究の大きな違いや、企業研究を行う目的、いつ行うべきなのかについてご紹介します。
企業研究とは
企業研究とは、志望企業をさまざまな角度から調べて理解を深めることです。
企業理念や事業内容、業績などの基本情報から、業界内での位置づけや強みや弱みなどの競合他社との比較まで幅広く把握する必要があります。
企業研究が不十分なまま選考に進んでしまうと内定獲得にもつながらないため、就活でも重要なプロセスです。
業界研究とは異なる
企業研究と混同してしまいがちな業界研究ですが、明確な違いがあります。
企業研究は、特定の企業について事業内容や社風、福利厚生などを調べることです。一方の業界研究は、業界全体の将来性や主要な企業などを調べることです。
企業研究と業界研究では、対象の大きさが異なります。
両者を混同してしまうと、就活で必要な作業に抜け漏れが生じてしまう恐れがあるため、十分に注意してください。
一般的には、業界研究で興味関心のある業界を見つけたあとに、企業研究で具体的に企業の情報収集を行う流れです。業界研究を行うことで企業への理解も深まるため、どちらも省略せずに丁寧に取り組みましょう。
企業研究の目的
企業研究を行う目的は大きく以下の3点に分けられます。1つずつ説明していきます。
- 興味のある業界から自分に合った企業を見つけるため
- キャリアプランを明確にするため
- 志望動機を具体化して選考を有利に進めるため
1つ目は、興味のある業界から自分に合った企業を見つけるためです。
興味のある業界のすべての企業の選考を受けることは難しいです。そのため、企業研究を行い、自分とマッチするかを判断して、選考を受ける企業を絞り込むことが大切です。同じ業界の企業でも、企業理念や福利厚生、社風など企業ごとに異なる要素は多く、それぞれの要素を比較することで自分に合うか企業かどうか判断することができます。
選考を受ける企業を絞ることで、1つの企業の選考対策にかけられる時間も多くなり、より効率的に就活を進めることができるでしょう。
2つ目は、キャリアプランを明確にするためです。
キャリアプランは面接でもよく聞かれる質問です。
もしも企業研究をしていない、または不十分な場合、具体的なキャリアプランを語ることができず、「本当に入社したいと思っているのかな?」と面接官に疑問を抱かせてしまい、落とされる可能性が高くなります。
反対に、企業研究が十分にできているだけで他の就活生との差別化になることもあります。入社後のキャリアプランを具体的に描くためには、その企業の製品やサービス、事業計画や企業理念への理解を深めるだけでなく、評価制度や研修制度、社風などを知ることで、その企業で働く環境をイメージしやすくなります。
3つ目は、志望動機を具体化して選考を有利に進めるためです。
内定を獲得するためには、応募先の企業をよく理解することが重要です。
企業について深く知ることで、ESや面接で聞かれるガクチカ、志望動機、自己PRなどをより企業に合わせた形で訴求できます。
例えば、「なぜこの企業で働きたいのか」「この企業で何がしたいのか」という部分を他社との違いやその企業の強みを交えて伝えることで、説得力のある志望動機になります。
いつ行うべきか
企業研究を行う時期の目安は、大学3年生の5月〜2月頃です。
大学3年生の5月はサマーインターンの応募を始める時期であるため、就活を本格化させるには適したタイミングです。そして、採用選考活動が解禁される3月になると説明会や面接で忙しくなり、じっくり考える時間が取れなくなってしまうため、遅くても2月までにはインターンシップへの参加やOB/OG訪問を重ねて企業研究を終わらせ、選考対策に集中できるようにしておくとよいでしょう。
学生生活は、サークルやアルバイト、ゼミなど就活以外にもやることがたくさんあります。また、企業研究の項目も多岐にわたるため、数日で終わらせようとするのではなく、数か月かけて少しずつ進めるように心がけましょう。
一方で、留学や部活動などの大会など就活以外の優先したい予定によって就活が思うように進められないこともあるかもしれません。しかし、就活は自分が納得した会社で働くためのものなので、開始時期が遅れたとしても、焦らず着実に企業研究に臨みましょう。
企業研究のやり方
情報収集に力を入れても、うまく活用できなければ意味がありません。わかりやすい形でまとめて、いつでも見返せる状態にしておくことが企業を比較しやすくするポイントです。
おすすめは、企業研究シートの作成です。
企業研究シートとは、興味がある企業や応募を検討する企業の情報を一元化してまとめたものです。企業研究で調べる項目は企業理念から求める人物像、福利厚生など多岐にわたります。集めた情報を整理して、選考に生かすために企業研究シートの作成がおすすめです。
企業研究シートの具体的な作成方法や目的、メリットを解説します。
企業研究シートのテンプレートを作ろう
企業ホームページやインターンシップなどから得た情報を整理・記録して、自分で見返す目的で作成するため、わかりやすく表形式でまとめておくとよいでしょう。なお、使用する媒体は、紙のノート、ExcelやGoogleスプレッドシート、メモアプリなど、使いやすいものを使ってテンプレートを作成してみてください。
次に具体的な作成手順をご説明します。
- インターンや説明会の前までにテンプレートを作成する
- わかるところから記載していく
- 情報を追記する
まずは、インターンや説明会の前までにテンプレートを作成することが重要です。
必要な項目を整理して、企業に関係なく利用できるテンプレートを作りましょう。初めにレイアウトを決めたほうが、企業間の比較がしやすくなります。
企業研究シートは後から見返すことが目的のため、あらかじめ余白を設けたり、項目の位置を工夫したり、細かい部分までこだわるとよいでしょう。
また、企業研究シートを作成する時期ですが、インターンや説明会に参加する前にある程度企業のことを把握しておく必要があるため、就職活動が本格的に始まる前に作るのがおすすめです。事前に企業の情報をある程度知っている状態で臨めば、採用担当者や従業員の話がスムーズに理解できるうえ、メモをしようと慌てることも少なくなります。OB/OG訪問や座談会に参加する場合は、質問内容を事前に考えておくことも重要です。企業研究シートの作成が完了していれば、ネットで調べればわかるような質問をする可能性が低くなり、より有意義な時間にすることができるでしょう。
テンプレートの作成ができたら、企業ホームページや就活情報サイトですぐに収集できる基本情報や、労働条件などわかるところから記載していきましょう。
わかるところから記載するのは、悩む時間を減らして効率よく進めるためです。
競合他社との違いなどのリサーチに時間をかけるべきところはじっくり取り組み、その他はスピードを重視してテキパキ記入するというように、メリハリをつけて作成するのがポイントです。企業研究を進める中で新たにわかる情報もあるため、余白を多めに取っておくことも大切です。
また、説明会やインターンシップに参加したら、その情報を追記しましょう。
同じ企業の情報が1つにまとまっていることで、いろんなページを探す手間が省けます。ただし、情報が多すぎると見づらくなってしまうため、要点を絞って記載することも意識してください。
企業研究シートの目的
企業研究シートを作ると、企業研究の目的である企業理解と選考対策に役立ちます。同じ業界でも企業によって製品・サービスの違いや、業務内容の違いなどを比較して、自分の価値観に合っているか理解できるでしょう。
業界研究では大まかな傾向しか把握できないため、企業研究シートでそれぞれの企業を深掘りすることは有効です。自分との相性を確認し、入社後のミスマッチを防ぐ意味もあります。
企業研究シートを作るメリット
企業研究シートを活用し、得た情報をまとめることで、その企業の情報を記憶に定着させることが期待できます。選考の場ではメモを見て面接の回答を考えることはできません。そのため、この企業研究シートに重要なポイントを事前にまとめておき、何度も見返しながら面接対策を行うようにしましょう。
また、シートのレイアウトをそろえることで、複数の企業の情報を一目で見比べられます。企業ごとにサイトに記載する場所や書き方は異なるため、企業研究シートにまとめることで何度もサイトを確認する必要がなくなり、時間短縮にもなります。
そして、説明会やインターンで新たな情報を得たときは、随時追記して、同じ企業の情報はこのシートにまとめておくようにしましょう。
企業研究をする上でのポイント
調べるだけではなく自分がどう思ったかもメモしておく
企業研究シートには、インターンシップや座談会に参加して感じたことも記載しておきましょう。イベントに出席して得た感想やエピソードは、受け取る情報は同じでも、個人差があります。企業研究シートに感想を記載すれば、内容が充実するだけでなく、選考でも使える武器にもなるのです。
企業研究シートは自分が見返すためのものなので、記載する感想は、「福利厚生が充実していて働きやすそう」「明るく活発な社員が多い」など、率直な感想で問題ありません。
また、イベントだけでなく、先輩社員インタビューを読んで感じたことや、印象に残ったエピソードなどを記載するのもおすすめです。
企業の気になるところにも目を向ける
良い面だけでなく、気になる面についても目を向けましょう。その理由は次の2点です。
1つ目は、課題解決にアプローチをするという視点からです。
「御社が抱える〇〇という課題を私は解決したいと思っています」というように、企業の課題から自己PRにつなげることができます。
2つ目の理由は面接対策です。会社の弱みについて面接で質問されることもあります。なぜそのような質問をされるのかというと、「自社の弱みを把握した上で応募しているか」「企業研究が客観的にできているか」を知るためです。
弱みを把握していない人を採用してしまった場合、入社してからすぐに辞められてしまうこともあります。弱みを把握した上で志望しているのかどうかを見極めるために、こうした質問をされることがあるのです。
企業研究で調べること、チェック項目
企業研究の目的や方法は理解できたけれど、何を調べればいいかわからないという方のために、ここでは、一般的に企業研究で調べる項目の例について解説します。
会社概要
会社概要では企業の全体像をつかむことができるので、一番最初に調べることをおすすめします。従業員数、事業内容、拠点の数、本拠地、資本金、創業年度など、会社概要から様々な情報を集めることができ、企業研究シートの多くの欄を埋めることができるため、企業研究のペースを早めることにもつながります。
また、従業員数や創業年度からは、会社の規模、拠点の数からは転勤の有無が想像できるなど働くイメージを膨らませることにもつながります。
企業理念・使命・行動指針
企業によっては、ミッション、ビジョン、バリューなどと呼ばれていることもあります。
企業理念や使命、行動指針は、その会社が目指すゴールや、根幹となる部分です。会社の価値観と自分の価値観が合わないと、入社してから「自分のやりたいことと違う…」とギャップを感じてしまう可能性もあるため、チェックしておくとよいでしょう。また、行動指針には、その企業においてロールモデルとされる行動が記載されています。その企業が求める人物像を知る上でも役に立ち、自分との共通点があるか確認することで面接などの選考でも活かすことができるでしょう。
事業内容
事業内容とは、その企業が扱う製品・サービスの内容です。大手企業や有名企業の場合、メインの事業のほかにも複数の領域で事業を行っている場合もあります。企業のホームページや公式SNS、業界に関するニュースサイトなど複数の情報源から情報収集をしておくとよいでしょう。
入社した場合、自分がどの事業に携わる可能性があるかを知っておくことで働くイメージを膨らませる一助となります。また、その事業で価値を届ける相手が一般消費者(BtoC)なのか、法人(BtoB)なのかなど、その事業が価値を提供している相手を調べることで、職種や仕事内容のイメージも深めることができます。
そして、事業内容だけでなく、今後の展望を知っておくことも重要です。企業の将来的な方向性や新規事業の展開などから、入社後に自分が興味のある仕事ができるかを判断できます。また、事業方針から「どういう人物を求めているのか?」と考えることができるので、選考対策にもなるうえ、内定後は事業に活かせそうなスキルを身に着けるなど入社準備の際にも活かすことができるでしょう。
競合他社の場合でも、事業内容が異なる場合があるので、一社一社丁寧に確認してください。
事業に活かしている強み
強みとは競合他社と差別化できるポイントを指し、その企業ならではの強みを知ることで、業界内でのポジションや企業の将来の見通しを把握することができます。
具体的には、国内シェアナンバーワン、商品ラインアップの広さ、顧客継続率の高さなどが該当し、「◯◯が選ばれる理由」「私たちの強み」などと記載されていることが多いです。
強みを知ることで、強みをさらに伸ばすために自分がどう貢献できるのかなど、志望動機に深みを持たせることも可能です。たとえば、海外展開に強い場合は語学力を活かせるなど、アピールにもつながります。また、「競合他社ではなく、なぜその企業を選ぶのか」という説得力を持たせる材料ともなりうるため、複数の強みを見つけておくとよいでしょう。
競合と比べた時の弱み
企業の弱みや課題も、強みと合わせて企業研究を通して把握しておくことで、その企業の業界内でのポジションに対して理解が深まります。具体的には、「顧客が国内に集中している」「女性管理職の比重が少ない」などが弱みに当たります。
企業自ら自社の弱みをさらすことは基本的にないので、OB/OG訪問や、座談会で質問を行ったり、口コミサイトで傾向を調べたりするとよいでしょう。ただし、ネットの情報を安易に信用しすぎないように注意しましょう。
弱みを知っておくことで、入社後のミスマッチも減らすことができます。例えば、希望する分野の業界シェアが低い場合、投資やリソースが少なく、入社後に希望する分野の業界に携わることが難しい可能性があります。弱みに対する企業の対策もあわせて把握できると、今後の展望を推測できるでしょう。
また、選考で企業の弱みに対して自分が貢献できる点や改善提案を伝えることで、志望動機に深みが増します。
業績
企業の収益や財務状況などの業績は事業の成長性や安定度を、客観的に測定できる重要な指標です。多くの就活生が年々成長している企業に入社したいと思うでしょう。業績が悪化の一途をたどる、経営がうまくいっているといえない会社では、倒産の不安もあります。
一部の企業は株主や投資家に向けて、コーポレートサイトに事業年度の売上や利益をIR(投資家向け情報提供)情報として掲載しています。その場合、IRの今年や去年の数字だけではなく、数年間の業績推移を確認することで将来性を判断する要素にもなるでしょう。
企業文化・社風
企業特有の文化や社風は職場の雰囲気や従業員の働き方などを指しています。「若いうちから裁量権を持って働くことができる」「チームで協力することが多い」「女性の産休や育休後の復職率が高い」など、環境は会社によってさまざまです。自分の働くイメージに近いのか、自分が求める環境かどうかを判断する上では見ておきたいポイントです。
どんな人がいるのかは、会社によってさまざまで、1人1人の性格や価値観によって感じ方が変わる部分なので、実際にOB/OG訪問などで社員と会い、自分の感覚で判断することが大切です。また、社員と会うことが難しい場合でも、企業が求める人材や行動指針を把握することで、どんな社員が多いのかおおよその雰囲気を知ることができます。社風は、規模感や業態などによって似通った風土を持つ場合が多く、一般的に、ベンチャー企業では風通しのよさ、日系大手の場合は福利厚生の充実度が高い傾向にあります。同じ規模感、業態の企業を複数調べて傾向をつかむようにするとよいでしょう。
企業文化や社風が自分とはギャップがあると感じた場合には、ミスマッチにつながる可能性もあります。自分に合う企業を見つける上でも役に立つ情報です。
平均年齢
従業員の平均年齢は、職場の雰囲気や自分のキャリアプランを考える上で非常に重要な指標です。例えば、平均年齢が若ければ、「若いうちから成長できる環境が整っている」と感じられることが多く、キャリアのスタート地点として魅力的に映るでしょう。反対に、平均年齢が高い職場では「安定して長く働ける」という印象を持ちやすく、経験を積んでいくために安心して働ける環境が整っていると感じることができます。このように、従業員の平均年齢を知ることは、今後の働き方やキャリアの方向性を考える材料となり、職場選びの重要な要素となります。
給料
平均年収や初任給はもちろん、賞与の有無、付与の時期、昇給のタイミングなど、会社によってさまざまであるため、待遇面を大事にしている人には要チェックのポイントです。また、固定残業代が給料に含まれているかどうかによって実際に支払われる給与も変わるため、確認しておくとよいでしょう。
加えて、募集要項などに記載されている給与の金額は手取りではなく、税金や社会保険料を控除する前の総額であるため、注意してください。
評価制度
入社後のキャリアパスに大きく関わる評価制度も忘れずに確認しましょう。就活のゴールは内定の獲得ではなく、入社して満足いく働き方を実現することです。そのため昇進は、働くモチベーションを左右する重要な要素だといえます。評価や昇進の基準を理解することで、入社後の働くイメージや、キャリアパスをイメージしやすくなります。
また、人事制度もメンター制度や社内ドラフト制度など会社によってさまざまです。具体的にどんな人事制度があるのかを調べることはもちろん、話を聞く機会があれば、実際にどのくらい活用されているのかOB/OG訪問などで現場の人の声を聞いてみるのも良いでしょう。
勤務地・勤務体系
勤務地や転勤の有無も働く環境を左右する要素として重要です。
希望する勤務地があるかどうかや、転勤の可能性、転勤するならどこに拠点があるのか把握しておくとよいでしょう。地元で働きたい、転勤したくないなどのこだわりがあるのであれば、どのくらい希望が通るのか説明会やOB/OG訪問で確認してみるとよいでしょう。企業研究の際は転勤の頻度や、主要な勤務先までまとめておくと、企業選びの際に便利です。
また、勤務体系によっても働き方は異なります。シフト制やフレックス制度の有無、夜勤の有無も入社後の働き方をイメージする上では役に立つ情報です。ワークライフバランスを重視する人は確認しておきましょう。
休日・休暇
休日の日数や休暇制度は、働きやすさやプライベートの充実度に関わります。
令和4年就労条件調査によると、年間休日の平均は労働者1人当たり115. 6日でした。休みが多い企業か知りたいときは、上記を目安にすると分かりやすいです。
なお、完全週休二日制と週休二日制では定義が異なります。前者は毎週必ず二日間休める環境を表し、後者は月に1回以上は週休二日の週があることを示す言葉です。この2つを混同してしまうと想像以上に休日が少ないということになりかねないので注意しましょう。
また、独自の休暇制度を設けている企業もあるのでチェックしてみてください。
福利厚生
福利厚生とは福祉の向上を目的に、企業が従業員に提供する給料以外のサービスなどを指します。
具体例は、家賃補助やストックオプション、学習手当、フリードリンクなどです。企業によってはユニークな福利厚生を設けているところもあります。福利厚生と一括りにしても企業ごとにさまざまな制度があるため、先に自分が求める制度を明確にしたほうが、志望先の優先順位づけを考える際には効率的です。
福利厚生は社内に向けたサービスのため、給与と同様、志望動機の理由に挙げるのは好ましくないとされています。福利厚生は、労働環境の一部となる副次的な要素です。働きやすさを図るポイントとして調べておくことは大切ですが、企業選びで直接影響を与える要素にはならないでしょう。
採用情報
採用人数は、その企業が新卒採用にどれほど力を入れているかの指標になります。ここ数年の採用人数の増減や新卒採用と中途採用のバランス、離職率や定着率も確認するとよいでしょう。中途採用を行っている会社であれば、求人票を見ることで、その会社の職種や具体的な仕事内容、キャリアイメージを持つこともできます。中途採用を積極的に行っていない場合は、新卒採用を重視し、長期的な人材育成をめざしていると考えられます。
また、選考の一般的な流れは、「書類選考→適性検査(Webテスト)→一次面接→二次面接→最終面接」ですが、企業によって面接回数やWebテストのタイミングなどが異なったり、グループディスカッションやケース面接が行われる場合もあります。
選考の開始時期も企業によって異なるため、注意が必要です。3年生の3月に採用選考活動が解禁となり、6月から面接が行われ、10月以降に内定が出るという流れが通常です。しかし、外資系やベンチャー企業など一部の企業では優秀な学生をいち早く採用するために、前倒しで採用を進めることもあります。
評判
企業研究を行う際には、その企業の評判も調べておくこともおすすめです。
実際にその企業で働く社員だからこそ知っていることや感じていることを口コミサイトなどを調べることで、評判を知ることができます。自分が選考を受けようと考えている企業が、社員からはどう評価されているのか、調べてみるとよいでしょう。また、最新のニュースや業界紙を活用し、その企業が業界内でどのようなポジションにあるのか、また業界全体の動向や評判を客観的に知っておくことも大切です。そうすることで、企業選びを慎重に行うことができるでしょう。
ここまで、企業研究で調べる具体的な項目についてご紹介しましたが、ビジ研では企業ごとにこれらの項目がすべてわかるようになっています。企業研究を効率的に進めるためにもぜひご活用ください!
企業研究の情報収集方法
情報収集には企業のサイトや就活情報サイト、業界地図や経営者の取材記事、新聞やニュース記事などが活用できます。また、インターンシップや座談会、OB/OG訪問で実際に経験した情報を集めることも大切です。
企業研究の方法を列挙するとともに、各方法の注意点やポイントを解説します。
企業ホームページ
企業の公式ホームページは、その企業からのメッセージが最も端的に表現されており、その企業らしさを理解するには最適なツールです。また、ネット環境さえあれば、スマートフォンでもパソコンでも手軽にチェックできる点も企業研究を行う際のメリットといえるでしょう。
企業の公式ホームページで特にチェックしておきたい情報は以下の4点です。
・株主/投資家向け情報(IR)ページ
上場企業であれば、投資家向け情報(IR)ページが、ホームページ内に設置されています。会社のこれまでの業績や今後の事業展開の方針を知ることができ、より多角的に企業を捉えることができます。
・製品情報ページ
商品・サービスと業態、取引先・販売先、事業規模などを調べて、「誰に、何を、どのように提供しているのか」「どんな価値提供をしているのか」を把握しましょう。
また、サービスや製品ごとに独立した別のサイトがある場合には、そちらもチェックしましょう。複数の事業展開をしている企業は、売り上げシェアの一番高い事業と意外性のある事業を見ておくと、入社後の仕事の幅をイメージすることができます。
・採用ページ
企業の採用ページでは、職種や実際の仕事内容、福利厚生などの働き方や、求める人物像まで、さまざまな情報が記載されています。企業によっては新卒向けのサイトを企業の公式ホームページとは別に設けている場合もありますので、くまなくチェックしておきましょう。
・ニュース/プレスリリース
企業の最新情報や新規事業の発表を確認できます。
会社説明会
採用選考活動の解禁後に行われる会社説明会やセミナーは多くの就活生が参加します。実際に働いている人の話を聞き、活躍する従業員の特徴や人となりを把握できる点がメリットです。
説明会やセミナーは複数の企業が協力して行う合同説明会と、単独開催の2種類があります。合同説明会は文系・理系に分かれたものや、業界別、体育会系の学生向けなどさまざまなものがあります。合同説明会も単独開催も基本的に申し込みをすれば誰でも参加でき、選考があるインターンシップと比べると、敷居の低さが魅力です。
説明会では、事業の方向性や採用コンセプト、キャリアパス、人事制度・福利厚生などサイトでは確認できない詳細な話が聞けます。
また会社説明会やセミナー時は、質問をするよう心がけてください。疑問点をその場で解消できる他、会社の採用への姿勢を感じ取れるため、志望度を決める際に役立ちます。
インターンシップ・座談会
インターンシップや座談会は企業の人事担当者や現場で働く社員と直接話せる機会です。企業研究の中で調べても解決できなかった疑問点や興味のあることを質問してみましょう。話す中で会社の実情や社風、どんな人が働いているのかを知ることもできるでしょう。
職務を体験できるインターンシップは、自分がその仕事内容に適性があるかどうかを見極める際にも有効です。業務体験をしたあとは、想像とギャップがあった点や苦戦した点、やりがいなどの感じたことを忘れないうちにメモしておきましょう。また、目の前の作業に集中することも大切ですが、あくまでも企業研究の一環で行うため、全体的な業務フローやキャリアパスの確認も意識しましょう。
企業が主催する座談会も、社員の話が直接聞ける貴重な体験でしょう。座談会では業務の話や社員自身の就活、社内の雰囲気などをありのままに伝えられることが一般的です。業務がからむインターンシップよりも近い距離感で質問もしやすく、OB/OG訪問が難しい学生でも社員と直接話すことができる機会のため、参加をおすすめします。
なお、Meets Companyでは上場企業からベンチャー企業まで様々な企業の座談会形式の合同説明会に参加できます。1回あたり2〜8社の社長や人事と直接話すことで、自分の疑問点や業界について理解を深めることができます。また、社長や人事から直接内定を頂けることもあります。合同説明会後にはプロの就活アドバイザーと面談し、あなたの就活の不安や悩みを解消できます。
ニュース、書籍
「日経電子版」などのニュースや書籍から企業研究を行うのもおすすめです。
特定の業界に関する最新のニュースや、動向がわかる業界新聞は年に一度の業界地図では担保しきれないタイムリーな情報を横断的に得ることができます。日常的にチェックして、重要だと感じた記事は切り抜きやブックマークですぐ見返せる仕組みを作ると良いです。
また、「業界地図」という書籍が、複数の出版社から発刊されています。これらの書籍は、業界における各企業の立ち位置を知るのに役立ちます。複数の企業を比較しやすく、同業他社との違いも明確になるので、企業研究だけでなく志望動機をまとめる際にも役立つのでぜひ活用してください。フォーマットや取り扱い業界なども書籍によって異なるので、自分に合うものを選びましょう。
そして、企業の社風や仕組みは、経営者の考え方が色濃く反映されています。最終面接でもない限り、経営者に直接会って話を聞くのは難しいため、取材記事や書籍があれば目を通しておくことをおすすめします。
創業に至った背景やターニングポイント、企業の歴史などの有意義な情報を得られるだけでなく、ホームページの代表挨拶や会社説明会の資料では確認できない、書籍や取材でのみ答えているエピソードもあるでしょう。今後の展望のような、ビジネスに深く関わる話が見つかるかもしれません。経営者の取材記事や書籍をチェックする学生は限られるため、選考で「読みました」とアピールするだけでも好印象です。
OB/OG訪問
OB/OG訪問とは、気になる業界や企業で働いている方に仕事の内容や社内の雰囲気などを伺うことです。先輩社員の生の声を聞くことができます。
公式の場では聞きづらいような残業時間や有給の取得しやすさなど、踏み込んだ労働環境についても気軽に質問ができる貴重な機会です。説明会や座談会でも働いている方の話は聞けますが、よりリアルな情報を知りたい場合はOB/OG訪問が適しています。また、説明会や座談会とは異なり1対1のため、疑問点が解消できるまでじっくりと会話を重ねることができる点もOB/OG訪問の魅力です。
OB/OG訪問では社員の方の時間を頂戴しているという自覚を持ち、丁寧なメールやマナーを意識しましょう。加えて、せっかくの機会を無駄にしないように深い質問ができるように準備をして挑みましょう。
企業の公式SNS
母集団形成やブランディングのために、LINE、X、Instagram、TikTok、YouTubeなど目的に合わせてさまざまな媒体をかけ合わせて企業はSNSで情報を発信しています。
公式SNSでは、企業の社風がわかる情報や就活生向けの情報が発信されている場合もあります。たとえば、YouTubeなどで社員の1日の仕事密着動画や、社員インタビュー、対談動画、説明会では伝えきれないようなより詳細な職種の情報などを掲載している場合もあるので、リアルな雰囲気を掴むためにもチェックしてみましょう。
また、公式SNSでインターンシップや説明会のお知らせがあったり、公式SNS経由で選考に応募できる場合もあります。
口コミサイト
口コミサイトでは、社員のリアルな声を手軽に見ることができます。ただし、退職した人や現職に不満がある人が書き込むケースも多く、実際よりもネガティブに書かれている場合もあります。そのため、口コミの内容を鵜呑みにするのではなく、参考情報としてOB/OG訪問で実際に社員に聞いてみるなど、質問の準備に利用するのが良いでしょう。
また、口コミサイトにも様々なものがありますが、学生ユーザーをターゲットとしている「OpenWork」や「就活会議」、「みん就」などがおすすめです。
特に「就活会議」は企業の口コミが見れるだけではなく、約13万件もの面接や選考の体験記や、選考を突破・実際に内定を獲得した先輩のESを見ることができます。さらに、本選考だけではなく、インターンシップの内容やインターン選考の体験も掲載されているので、企業研究だけでなく選考対策にも活用できます。
企業研究で陥りやすい失敗
企業研究にはさまざまな方法がありますが、その中には効率的でない、失敗を招きやすい方法も存在します。
サークルやアルバイトなど忙しい学生生活を送る就活生は、企業研究に割ける時間に限りがあります。貴重な時間を無駄にしないよう、次のような企業研究のやり方は避けましょう。
企業研究自体が目的になる
企業研究はあくまでも納得した企業に就職し、働くための手段にすぎません。目的を明確にしなければ、延々と企業研究をすることになってしまいます。情報を深掘りし際限なく調べても、それが就職活動と結びつかない場合は、徒労に終わってしまいます。
企業研究に充てられる時間は限られているので、まずは目的を明確に定め、調べる項目を絞って企業研究シートを作成し、悩む時間を減らしましょう。企業について知ること、調べること自体が目的になってしまわないように、注意しなければなりません。
目的を決めずにあれこれと情報を集めて比較しようと考えると、作業量が膨大になり着手自体がおっくうになってしまいます。目的を明確にすることこそ、企業研究の第一歩です。
自己分析が不十分な状態で行う
企業研究を行う目的が「自分に合った企業を選ぶこと」であれば、一般的には、企業研究よりも先に自己分析を行った方が良いといわれています。
自己分析を行い、まずは自分がどのような業界に入りたいのか、どのような職業や企業に向いているのか、ワークライフバランスや裁量権など働くうえで重視することは何かを明らかにすることが必要です。そうすることで、自分とミスマッチな企業を最初から調査の対象外にすることができます。
自己分析が不十分な状態で企業研究を行っても、研究対象に選んだ企業が自分に合っていなかった場合、調べた時間がまるまる無駄になってしまう可能性があるでしょう。
日本には360万社以上の企業が存在します。数多くの企業の中からできるだけ短い時間で自分に合っている会社を見つけるためにも、自己分析は十分に行っておくことが重要です。
ただし、自己分析に詰まってしまった場合は、間に企業研究を挟み、自分を見直すのも良いでしょう。説明会に参加したり、社員の話を聞くことで自身の価値観が明らかになる場合もあります。この場合の企業研究は自己分析の一環と考えられるでしょう。
企業研究で調べたことを就活に活かすためには
企業研究を行ったあとは、ESや面接などの選考に活用していきましょう。
ここでは、企業について調べただけで終わらせず、選考に活用するための方法をお伝えします。
競合と比較し、志望企業でなければならない理由を明確化する
企業研究シートを書き込むことで、同じ業界でも企業ごとの違いがわかってくると思います。企業ごとの特徴が捉えられたら、それぞれの企業の「良いところ」と「気になる点」を洗い出し、「競合他社ではなくこの企業を志望する理由」を見つけていきましょう。
例えばあなたが「歴史と伝統のある企業で10年かけてゆっくり成長していきたい」と考えているとします。そんななか、企業研究をしている企業が歴史はあるが、早期離職率が高い企業だとしたらどうでしょうか?
この場合、エントリーする企業を歴史もあり社員の離職率も低い企業に絞るか、あるいは早期離職率が高い原因を調べる必要がありそうです。
このように、企業の「良いところ」と「気になる点」を書き出すことで、自分自身のキャリアのイメージとギャップがないか確認することができます。
また、自己分析で見つかった価値観や企業を選ぶ際に重視したい要素に優先順位をつけ、1つ1つ確認していくことで、就職先の希望順位も明確になるでしょう。
自己分析に反映する(就活軸、志望動機)
就活の軸を明確にすることで、志望企業の選定に活用することができます。就活をはじめた時点では「就活の軸がわからない」と悩んでいても、企業研究を通して企業や自分の価値観への理解が深まり、軸が見つかることもあります。
軸が明確ではない状態で企業を選んでも、納得がいく会社を発見できるとは限りません。入社後にミスマッチが生じてしまう可能性もあります。
就活の軸を見つける目的を考えると、はじめから自分の可能性を限定するのではなく、幅広い視点で企業研究を行いましょう。後でノートを見返したときには、業界内や他業界でリサーチが不十分な会社はないかチェックするのも有効です。
また、内定を獲得するには志望動機で以下の2点を伝えることが重要です。
- なぜその業界で、なぜその企業で、なぜその仕事をしたいのか
- 自分の強みと企業が求める人物像が重なり合う部分
まずは、特別なものではなくてよいので、自分の経験を踏まえて「なぜその業界で、なぜその企業で、なぜその仕事をしたいのか」という理由を志望動機に盛り込むことを意識しましょう。そうすることで、説得力とオリジナリティのある志望動機になります。加えて、その企業でなければならない理由を明らかにすることで、採用担当者に入社意欲が伝わるでしょう。
次に、企業研究シートを用いて自分の強みと企業の求める人物像との共通点や仕事の特性を把握しておきましょう。自分の強みが明確で、かつ企業理解が深い状態になっていれば、入社後にどのような形で会社に貢献できるか、説得力のある訴求が可能です。共通項をベースに志望動機を作ると、厚みがある内容になり、選考通過へ有利に働くでしょう。
募集要項などに書かれている「求める人物像」や「企業理念」には、抽象的と感じる言葉が多いかもしれませんが、その企業が対象としているお客さまや仕事の進め方を知っていくと、その企業が掲げる「求める人物像」や「企業理念」の背景への理解が深まります。志望動機で「理念に共感しました」と伝える際にも、「こういう仕事だから“挑戦”という言葉を理念に掲げている」という自分なりの解釈を交えて伝えられると、説得力が増すでしょう。
最後に、志望動機は以下のような手順で書くと伝わりやすい文章になるので、参考にしてみてください。
- 企業のどこに魅力を感じているのか、最初の一文で簡潔に語る
- そう考えている根拠を、自身の価値観を交えて説明する
- 入社後、どのように活躍できるのかを書き入れ、全体をまとめる
志望企業を誰よりも詳しくなる
企業研究を進めて選考を受ける企業を絞れたら、1社1社の企業研究をさらに深掘りしていきましょう。企業研究は、就活を成功させるためにとても重要なステップです。企業について詳しくなると、志望動機でアピールすべき点がわかるようになるため、選考を通過する可能性を高められます。
企業研究は、採用ホームページはもちろんですが、インターンシップやOB・OG訪問など様々な方法で行うと、よりリアルな情報を入手できます。誰よりも志望企業について詳しいと言えるレベルになれば、選考にも自信を持って挑むことができるでしょう。
また、たとえ選考に落ちたとしても「あれだけ頑張ったから」と納得できる可能性が高まります。どんな結果だとしても入念に対策できたのであれば、結果に納得しやすいのです。
まとめ
企業研究は、興味のある業界の中からあなたに合う企業を見つけるための大切なプロセスです。志望業界の中での立ち位置、同業他社・競合他社との違いなどの観点から、自分の志向に合う企業を絞り込んでいきましょう。
また、企業研究を通して「なぜこの企業で働きたいのか」「この企業で何をしたいのか」といった志望動機や就活軸を明確にして、選考に活かすこともできます。入念に企業研究を行って志望動機に説得力が増すと、それだけで他の就活生との差別化にもつながるので、公式ホームページやインターンシップなど様々な方法から企業研究を行いましょう。
そして、企業研究で調べた内容は、企業研究シートとしてまとめておくと複数の志望企業について比較しやすくなるだけでなく、その企業ならではの魅力にも気がつきやすくなります。面接前にもさっと見返すことができるのでおすすめです。